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蟹工船のあらすじと感想をご紹介します。短いあらすじを知って興味を持ったらぜひ、書籍をお読みください。
サクッと内容の把握ができるので、読んだことがない人でもすぐ語れるようになります。読書感想文やレポートにもぜひお役立てください。
蟹工船のあらすじ①
ロシア戦争後、日本はロシア近海までカニ漁をすることができるようになりました。カニ漁の船ではたらく労働者は、「糞壺」とよばれる劣悪な環境で、過酷な労働をしていました。
学生も多く乗船し、多くは借金を抱えており斡旋業者にだまされて、汽車賃や手間賃を引かれています。乗船して初めて自分がだまされたと知るような世間知らずの若者たちでした。
ある日無線係は、SOSの通信を聞きます。船長に助けないのかと尋ねると、助ける暇はない、働いた方が金になる、という非人道的な答えでした。彼はどうしようもできず、SOSがプツリと切れた時、苦しい思いをするのでした。
そしてそのことを「学生上がり」に言います。学生上がりは、自分も同じようなぼろ船に乗っているので、いつ自分が死んでもおかしくないと腹が立ちます。
蟹工船は法律上、船ではなく工場なので、船の保険もなければ保証もありません。会社の重役が日本帝国のためと言っているが、お金がごっそり入るのは重役で、働いている自分には死の戦いをしているのに、と彼は憤ります。
そして仲間の労働者が死んでしまう事件が起きました。彼の死体は麻袋に入れられただけで、誰しもが、こんな死に方をしたくないと強く思うのでした。
そんな中、仲間の船が漂流してロシア側に流れ着いてしまいます。そこで彼らは、「プロレタリア」という概念を知るのです。労働者こそ主体であるべき、という思想です。労働者は資本家に対して要求できる、と決意した「学生上がり」は、仲間と一緒にストライキをしようと画策します。
しかし船長に日本帝国海軍に通報され、計画は失敗します。帝国海軍はお金持ちの者、労働者のものではない、と「学生上がり」は悔しい思いをします。そして彼は言うのです。もう一度!と。
蟹工船のあらすじ②
オホーツク海を進む蟹工船「博光丸」。北の海では寒風が吹きすさび中で働く労働者たちは過酷な労働条件が強いられていました。労働者は北海道や東北の貧乏な農村から出稼ぎでやってきた人たち。「おい、地獄さ行(え)ぐんだで」
出航してオホーツク海遠洋で働く船内の労働者たちは、とても過酷な状況で働かされています。休日もなく早朝から夜遅くまでの労働、病気になろうが休ませてはもらえません。病気や怪我も全て自己責任なのです。
ここでの現場の監督は淺川という男で、彼は利益を上げることが第一で労働者のことは考えません。ピストルを持っていつも労働者たちを威嚇していました。
ある日並行して進んでいた船が沈みそうになります。その情報を得た船長は救助しようとします。ですが監督は、自分たちの収益が無駄になるので救助に向かわないよう船長を脅します。見捨てられた船は沈没してしまいました。
同時にこの船でも一人が波にさらわれたのか行方不明になっていました。しかし行方不明になっていた雑夫の宮口は隠れていて、見つけられてしまいます。そして彼は監禁され死んでしまいます。このように監督淺川による暴力や虐待、過労や病気で船員たちは次々と倒れてゆくのです。
ある日、博光丸の備え付けの小型漁船「川崎船」で作業を行なっていた一行が悪天候のため遭難します。ロシアの岸に打ち上げられた一行をロシア人が救出しました。彼らは体を治し本船に戻ってきました。戻ってきた一行はロシア人や通訳の中国人たちから聞いた話について話します。
日本の資本家はどんどん金持ちになり労働者は搾取されますます貧乏になって行くと。労働者が団結すれば資本家に勝つことができるのだと。そんなことがありながらも蟹工船の労働は過酷になって行きます。
他の船に負けているからもっと利益を上げたい淺川は、さらに労働者たちの食事や睡眠の時間を削り働かせます。そして船員と雑夫たちの間で競わせて効率を上げるようにしますが、とうとう死者が出てしまいました。淺川は弔うこともなく死体を海に投げ捨てます。
我慢の限界に近づいた労働者たちの中の9人が代表になってストライキを起こすことにしました。代表が浅川に直談判をしに行くも、落ち着いている浅川。彼は海軍の出動を要請していたのでした。海軍によってストライキは鎮圧されて9人の代表は逮捕されます。
国が国民のためではなく資本家を助けると理解した労働者たち。自分たちが団結しないといけないとわかった彼らは、全員でやらなければならないと悟ったのでした。そしてまたもう一度立ち上がることを決意したのです。
蟹工船の全文は書籍で読めます。小林多喜二の世界観を存分に感じられるので、ぜひ読んでみてください。
author:執筆者:高橋渉
グロい?怖い?「蟹工船」の感想・口コミ
【感想・評判調査概要】
調査対象:本書を読んだ人
調査手法:インターネット回答
50代女性
プロレタリア文学と言えば、小林多喜二のこの作品です。冬の北海道の海でカニ漁をする船の中の、悲惨な労働者たちの生活が生々しくひどくて、思わず目をそむけてしまいたくなります。日露戦争は日本が勝利した輝かしい歴史ですが、小林多喜二の目は批判的です。「閉塞作戦」と呼ばれる、舩をわざと沈没させてロシア海軍の邪魔をする作戦のせいで、戦後に北海道で漁をする漁船が沈没してしまう原因になっている、と彼は小説に書くことによって、暗に政府を批判しているのが、作家というよりもジャーナリズムの視点を感じます。
50代女性
大正時代のプロレタリア文学として有名な作品、学校で文学史を覚えるときに必ず出てくる作品です。北の蟹漁をする船の労働者たちの過酷でグロい場面が多く、暗い話なのかなと敬遠していましたが、読んでみるとその力強さに引っ張られどんどんページをめくっていきました。非正規労働、格差社会、現代の社会での問題があらわになっている今と同じだと思わずにはいられなかったです。蟹工船の労働者たちの団結の過程が描かれていますが、個人がバラバラになった現代、こうやって団結して行くことができるのかと思いました。
「蟹工船」最後の一文を考察
蟹工船を読んだ人に、最後の一文の考察をしてもらいました。
考察①
「もう一度!」が最後の一文です。一回目のストライキでは、全員ストライキする気でいたのに、会社側と話し合う代表の数人だけ蜂起したと思われ、帝国海軍に電報を打たれて制圧されてしまいました。失敗の原因が分かったので、もう一回、戦略を練りなおしてストライキするぞ、という労働者の意志が現れています。
考察②
付記にもあるように2回目のストライキは成功したと思います。ただ、帝国主義・資本主義という構造の中で弱い立場の労働者がすぐに大きな変革を起こすことは難しく、とてつもない巨大な敵に立ち向かうのと同じことです。それでも一人一人が立ち上がること、団結することでしか希望は見出せない。だから希望的な一文にとどめておいたのだと思います。
書き出しが有名な「蟹工船」の名言を紹介
蟹工船を読んだ人に、名言や印象に残った言葉を聞きました。
- 「おい地獄さ行ぐんだで」(蟹工船の書き出し)
- 「人間の命を何んだって思ってやがるんだ!」
- 「だから、貴方方、プロレタリア。分る?」
- 「俺達、死んでからも、碌ろくな目に合わないんだ」
- 「何んだか理窟は分からねども、殺されたくねえで」
- 「俺達には俺達にしか、味方が無えんだな。始めて分かった」
蟹工船の基本情報|英語版書籍や漫画はある?
作品の詳細 | 内容 |
---|---|
作品名 | 蟹工船 |
カテゴリー | フィクション・プロレタリア文学 |
著者 | 小林多喜二 |
発売日 | 1929年 |
ページ数 | 61 |
言語 | 日本語 |
ISBN-10 | 4003108817 |
ISBN-13 | 978-4003108819 |
蟹工船の英語版書籍
蟹工船は英語版の書籍もあります。
読みやすい漫画版もあります。また、「地獄の蟹工船~日本の貧困史~(ストーリーな女たち)」のように、浅川の情婦として船に乗り込んだ女性、あかね視点の漫画もあります。
蟹工船のあらすじ、ネタバレのよくある質問
蟹工船のよくある質問に回答します。
「蟹工船」の映画・舞台などの関連動画
「蟹工船」の映画・関連動画をご紹介します。
「蟹工船」は映画化されています。松田龍平主演です。
「蟹工船」の関連動画をご紹介します。
東京芸術座で舞台化もされています。他の劇団でも上演されています。
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