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芥川龍之介「地獄変」のあらすじと感想をご紹介します。短いあらすじを知って興味を持ったらぜひ、書籍をお読みください。
サクッと簡単に内容の把握ができるので、読んだことがない人でもすぐ語れるようになります。会話の話題づくりや読書感想文、論文にもぜひお役立てください。
地獄変のあらすじ①
堀川の大殿様は絵師である良秀を雇っていました。良秀は絵の技術にはたけていましたが、横柄で態度が良くなかったので御殿の中でも嫌われ者でした。良秀には唯一人間らしい愛情を注ぎ続ける美しくかわいい一人娘がいました。
大殿様はその娘に惚れて、娘を御殿に雇うことにしました。愛嬌もあったので大殿様はたいそうその娘を気に入って可愛がっていました。御殿にはどこからかもらわれてきた猿もおり、大殿は良秀と名付けていじめていました。良秀の娘はそんな猿を助けたので猿はたいそうその娘になついていました。
ある日、大殿様は良秀に「地獄変屏風を描いて欲しい。」と命令しました。褒美に何が欲しいか大殿が良秀に聞くと自分も娘を溺愛しているので、娘から手を引いて欲しいと頼みますが、聞き入れられず大殿の機嫌を損ねてしまいました。
数か月間屏風を描くことに熱中しました。良秀は実際にみたものしか描けないタイプの絵師でした。鎖で縛られ苦しむ人が見たいと弟子を鎖で実際に縛り苦しむところを絵にしました。
しかし最後になって牛車に乗ってもだえ苦しむ女性を描きたいが実際にみていないので描けないと大殿に申し出ました。大殿は牛車を用意し、それに女性を乗せ火を放ちました。その女性こそ良秀の娘だったのです。
良秀も地獄変を描くことに熱中し、最初は驚きしかめっ面をしていたものの、牛車に乗った娘が苦しむ様子を見てにやけてきて屏風を描くための筆を走らせ続けたのでした。
実際にみて描いた屏風絵は最高傑作となり、御殿の中で良秀のことを悪く言う人はいなくなりました。屏風完成後、良秀は自殺をしました。
地獄変のあらすじ②
平安時代に高名な絵師の良秀がいました。良秀はその腕前から堀川の大殿様に取り立てられていました。その一方で良秀は猿秀と呼ばれ嫌われていました。良秀は妻を亡くし娘がいましたが、その一人娘を溺愛していました。
親思いの心優しく、美しい娘は大殿様にも気にいられ小女房に取り立てられましたが、良秀は大殿様に娘の暇乞いを願いました。娘も大殿様を受け入れませんでした。
ある時大殿様は良秀に地獄変の屏風を描くように命じました。良秀は何かに取り憑かれたように狂気的な執念で制作に取り掛かりました。しかし自分が見たものしか描けない良秀は、地獄変を完成させるには、燃え上がる牛車とその中で焼け死ぬ美しい女人が必要だと大殿様に訴えました。
大殿様はその訴えを了承し、牛車に罪人の女を乗せて火を放ち、燃えて行く様を見せてくれることになりました。しかし牛車の中に捕らえられていたのは罪人ではなく、良秀の愛する一人娘でした。
良秀は始めは悲痛な顔で娘を見ていましたが、牛車に火がかけられると、恍惚とした表情で娘が焼けただれていく姿を目に焼き付けていました。良秀は地獄変の屏風を完成させ、称賛されました。しかし屏風の完成した翌日に良秀は自室の部屋の梁に縄をかけて命を絶ちました。
地獄変の全文は書籍で読めます。青空文庫にもありますが、芥川龍之介の世界観を存分に感じられるので、ぜひ書籍で読んでみてください。
author:執筆者:高橋渉
「地獄変」の感想・口コミ
【感想・評判調査概要】
調査対象:本書を読んだ人
調査手法:インターネット回答
50代女性
自分が満足し他人にも認められる傑作を完成させるために、自分の娘が犠牲になっても作品を完成させることに没頭する考えが信じられませんでした。娘の命と作品完成とどちらが大切なのだろうか、何をさておいても娘をすぐに助けないということは良秀は正常な精神状態なのだろうかと疑ってしまいました。また、大殿の自分に振り向かなかった女性を焼き殺すという行為に残酷で冷酷な人間で、人としてあるまじき行為だ、大殿の地位につけるのかと怒りさえ覚えました。屏風完成後の良秀の自殺は地獄変が自分の最高傑作で、自分の才能の限界を悟ったためではないかと思いました。
30代女性
堀川の大殿様に仕えて二十年来の私が語る地獄変の屏風の作成風景についてのお話です。傲慢な権力者による大殿様の命令により、狂気の芸術家である父親の作品に対する執念のもと犠牲になった娘の哀れな姿に悲しみを覚えます。溺愛して育てあげた娘が目の前でなすすべもなく焼け死んでいくことは確かに地獄の様相であったことでしょう。情のない見知らぬ罪人の女人ではなくて、愛する一人娘であったからこその芸術的な地獄変の完成なのでしょう。
地獄変は何が言いたい?主題や伝えたいこと
地獄変を読んだ人に、この本のテーマや伝えたいことを考えてもらいました。
主題・伝えたいこと①
美しく悲しい人間の存在が主題です。人間には私利私欲に溺れてしまう面と利他主義の二面性があるということです。芸術家としての芸術こそ他の何よりも大事、芸術が最重要と考える芸術至上主義という考え方と父親としての娘に対する愛情との間の矛盾と葛藤があることが伝えたいことです。
また、人間としての道徳性と芸術至上主義の間にも矛盾と葛藤があります。芸術を最高の位置に置いて考えることは良いが、他のものと天秤にかけて重要と思う度合いを調整しないと場合のよっては悲劇が生ずることもあるということです。何かに没頭しすぎることを程々にすべきという教訓もあります。
主題・伝えたいこと②
作品の語り手が堀川の大殿様に仕えて二十年来の人なので、大殿様を公然と批判するようなことは言わないし、伝えません。それとは逆に良秀に対してはけなし放題です。読み手は語り手の話から見える大殿様の言動への疑心を感じながら、語り手の描写する娘の哀れな最期の姿を想像することになります。
娘を目の前で焼き殺されて地獄を見た絵師にしか描けない地獄変の屏風を完成させた良秀。絵師の彼は自ら命を絶ちましたが、大殿様はその後も健在な様子です。権力者の傲慢さを現していると思います。
地獄変の名言・心に残った一文
地獄変を読んだ人に、名言や心に残った文を聞きました。
- 火をかけい
- もう好いから、あちらへ行ってくれ
- これが私には描けませぬ
- 見るとそれは私の足もとにあの猿の良秀が、人間のやうに両手をついて、黄金の鈴を鳴しながら、何度となく丁寧に頭を下げてゐるのでございました
- 日頃可愛がつてくれた娘なればこそ、猿も一しよに火の中へはひつたのでございませう
あらすじや概要では触れませんでしたが、この物語で唯一の良心は猿の良秀であると思います。娘に寄り添う猿の存在がなければただただ悲しいお話でした。
地獄変の娘を犠牲にした理由を考察
地獄変の屏風の描き手である良秀にとっての地獄絵図が愛する一人娘が自分の目の前で焼け死ぬことであったのなら、良秀の目の前で死ぬ女人は娘でなければばらないし、実際に自分の見たものでないと描けないのならば、良秀にとって屏風を完成させる方法が他にはなかったのです。
他にも様々な説があるので紹介します。
- 大殿から救い出すため
- 良秀自身が心の病で正気でなかったので善悪の判断がつかなかったから
- 良秀は娘を大殿に汚されるくらいなら絵の中に永遠に閉じ込めておこうと封じ込め作戦に出たから
- 娘の命より地獄変という絵を完成させる事の方が大切だったから
地獄変の基本情報
作品の詳細 | 内容 |
---|---|
作品名 | 地獄変 |
カテゴリー | フィクション |
著者 | 芥川龍之介 |
発売日 | 1919年1月15日 |
ページ数 | 243 |
言語 | 日本語 |
ISBN-10 | 4003107020 |
ISBN-13 | 978-4003107027 |
地獄変のあらすじ、ネタバレのよくある質問
地獄変のよくある質問に回答します。
「地獄変」のドラマ・映画・関連動画
「地獄変」のドラマ・映画・関連動画をご紹介します。
1969年に豊田四郎監督により「地獄変」は映画化されています。
また、「地獄変」は舞台化もされています。気になる方はチェックしてください。
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