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夏目漱石「草枕」のあらすじと感想をご紹介します。短い簡潔なあらすじを知って興味を持ったらぜひ、書籍をお読みください。
サクッと簡単に内容の把握ができるので、読んだことがない人でもすぐ語れるようになります。難しくてよくわからないという人もぜひ参考にしてください。
草枕のあらすじ①
日露戦争の頃と思しき日本。もう若くはない洋画家は山中の温泉宿へと旅に出かけます。
そしてその旅館で美しい那美という女将と出逢います。画家は芸術的な感覚で、那美は確かに美人であるもののその顔立ちには何かが足りないなという印象を持ちました。
のちに彼女に自分を描いて欲しいと言われた時にもそれを理由に断りました。しかし、その時はその足りないものとは何かはわかりませんでした。とはいえ、ひと慣れた那美との会話ははずみ山中でののんびりとした日々はただ穏やかに過ぎてゆきます。
しかし、画家は那美に指摘されて気がつくのです。自分がまだ一枚も絵を描いていない事を。
ある日、画家は那美が野蛮な身なりの男と会っている姿を見ました。それは那美の前夫で、那美に金の無心に来ていたのです。那美と結婚していた頃はたいそうな身分だったのですが家が没落したことを原因に那美と別れたのでした。
このままの状態で日本では生活していくのは経済的に辛抱できないと彼は満州に志願し出征することを決めていました。その一方で那美の従兄弟、久一も満州への徴兵が決まりました。
出発の日、那美は画家を連れ立って駅のホームに見送りにゆきます。実はその同じホームにはいつだったか那美にお金を無心していたあの男もいました。
画家は汽車の窓越しに何か言いたげな瞳で見つめ合う那美とあの男を見ます。そして、その時にやっと気が付いたのです。あんなにきれいな那美の表情に欠けていたものが何だったのか。それは「憐れ」の感情であるということに。
草枕のあらすじ②
あちらこちら旅をしながら絵描きをしている男性が主人公です。
ある時那古井の温泉街についたが雨に降られてしまいます。馬方の源兵衛に休憩所を尋ねるとこの辺りに唯一の志保田という人の旅館を紹介されます。そこには出戻りの女性、那美がいました。
那美は5年前に結婚し夫は大金持ちでしたが、日露戦争で銀行が破綻し那美とも別れて暮らしていたのです。主人公は那美に旅館についた翌朝、温泉に入っているところで出会いました。着替えの着物を持ってきてくれていました。
那美は宿の女将や針仕事をして暮らしているようでした。美人で美しい所作をするので絵に描くととても絵になる女性だと主人公は感じていました。
那美は主人公に朝着物を持って行ったお礼として絵をかいて欲しいと主人公に頼みます。ミレーの『オフィーリア』のような水に女性が浮かんでいる絵を望んでいました。しかし、主人公に那美は非人情な人と映っていたので、「君には何か足りないものがある。絵は描けない。」と言って断りました。
そんなある日、那美のいとこの久一が満州へ戦争に行くので駅まで見送りに行きました。その時偶然前の夫を列車に乗っているのを見つけました。
那美が別れた夫をじっと見つめているのをみて、主人公は「憐れ」を感じました。主人公は那美に足りないと思っていた「憐れ」を感じたので、那美に依頼されていた絵が描けると思いました。
草枕の現代語訳の全文は書籍で読めます。青空文庫でも読めますが、内容がわかりにくいので、ぜひ書籍を読んでみてください。
author:執筆者:高橋渉
難しい?「草枕」の感想・口コミ
【感想・評判調査概要】
調査対象:本書を読んだ人
調査手法:インターネット回答
40代女性
お話を追うだけでは、まるで夢の中のようなふわふわと掴みどころのない旅の話が続くだけです。しかしながら、そういったまさに睡眠中に見る夢の様に、架空性の高いような現実と陸続きであるような出来事を通して、くだらない世の中、生きづらい世の中において芸術とはかくあるべきという格言が具体的にしっかりと綴られてゆくので、ちょっぴり奇妙な感じがしました。それを難しいと感じる人もいるでしょう。おばけも恐ろしい事件も何も起こらない怪談、のような不思議な風景描写のなかに突如打ち立てられるビジネスにも応用できるような芸術哲学が面白くて癖になります。
50代女性
「自分に良かれと思って一生懸命努力して勉強をして知を磨いても、高慢になったり世の中では出る杭がは打たれ、感情に偏っても意志が弱ければ感情に流されてしまう。自分に近しい人には感情が先だって思い入れてしまって取りとめもなくなる。自分の意志ばかり主張すると人間関係がぎすぎすする。」このことに関して夏目漱石は世の中を客観的にみていると感じました。世の中をよりよく生きて抜いていくためには「能ある鷹は爪を隠す」ということが大切であること、情けのかけすぎは良くないこと、自分自身の感情を抑えるところは抑えて相手の立場にも立って物事を考えて感情表出をすること等、智・情・意のバランスをとって生きることの重要さやよりよく生きるための工夫や努力が不可欠であることが勉強になりました。
「草枕」冒頭の意味は?
冒頭文の意味を解説します。
山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
夏目漱石「草枕」冒頭文
上記の「草枕」冒頭は、智・情・意のバランスを取ることが大切という内容です。
知性があると高慢になったり、他の人から妬まれたりして出る杭は打たれる状態になるので、人から嫌われ人間関係がうまくいかなくなります。感情に偏ると意志が弱ければ感情に流されてしまうし、怒りの感情が強いと面倒な人と思われたりする。自分のことばかり考え意地を通すと人間関係がぎすぎすする。
この世はどのように生きたとしても、生きづらさを感じる様にできている(どうすりゃいい?)という嘆きの言葉です。
草枕で伝えたいこと
草枕を読んだ人に、この本が伝えたいことを考えてもらいました。
伝えたいこと①
旅先で出会った女、その謎めいた女の身の上、彼女とのちょっとしたやりとりを通して、漱石の芸術観が語られます。彼女の身の上もそうですが人間の生きる世には自分の力ではどうにもならない理不尽な事が多々あります。
しかし、この世をつくったのは人間、住んでいるのも人間。それならば人間として芸術家として、それらの不遇にも美を見つけ、昇華し、芸術まで高めるべきだ、という意志の表明ではないでしょうか?
伝えたいこと②
世の中はどこへ行って住んでもどのように生きて行っても、金銭がらみのこと・社会的地位のこと・利害関係のことなどがあり住みにくいものです。住みにくい世の中だ少しでも自分が住みよいようにするために自分なりに工夫して生き方を見つけ出す努力が必要。
草枕の名言・印象に残った言葉
草枕を読んだ人に、名言や印象に残った言葉を聞きました。
- どこへ越しても住みにくいと悟さとった時、詩が生れて、画えが出来る
- うまい物も食わねば惜しい。少し食えば飽き足らぬ。存分食えばあとが不愉快だ
- 怖いものも只怖いものそのままの姿と見れば詩になる。凄い事も、己れを離れて、只単独に凄いのだと思えば画になる
- 智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい
- うれしい恋が積もれば、恋をせぬ昔がかえって恋しかろ
- うまい物は食わねば惜しい。少し食えば飽き足らぬ。存分食えばあとが不愉快だ
非人情がテーマ「草枕」の基本情報
作品の詳細 | 内容 |
---|---|
作品名 | 草枕 |
カテゴリー | フィクション |
著者 | 夏目漱石 |
発売日 | 1906年 |
ページ数 | 256 |
言語 | 日本語 |
ISBN-10 | 4101010099 |
ISBN-13 | 978-4101010090 |
草枕は非人情をテーマにした作品です。ポイントは下記のとおり。
- 語り手がただある事実を話すこと
- 非人情を求めて旅にでる画家
- 画家から非人情な人間として見えている那美
夏目漱石が、当時の人情的文学に批判をこめて、非人情を目指した作品とされています。
草枕の英語版書籍
草枕は英語版の書籍もあります。
草枕のあらすじ、ネタバレのよくある質問
草枕のよくある質問に回答します。
「草枕」の関連動画情報
「草枕」のラジオドラマや朗読動画などがYouTubeにあります。気になる方はぜひチェックしてくださいね。
アニメ化の噂は本当?
「草枕」は以前ジブリの宮崎駿と作家の半藤一利の対談で、短くアニメ化してくれないかと会話の流れで出てきました。しかし実際にはアニメ化していません。
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