本ページは広告が含まれます。私たちのパートナーのリストを公開しています。
島崎藤村「破戒」のあらすじと感想をご紹介します。短いあらすじを知って興味を持ったらぜひ、書籍をお読みください。
サクッと内容の把握ができるので、読んだことがない人でもすぐ語れるようになります。会話の話題づくりや読書感想文にもぜひお役立てください。
島崎藤村「破戒」のあらすじ①
明治の終わり、長野県でのお話です。生き物をとさつしたり、皮をはいだりする職業は昔から汚らわしい職業だと考えられ一般の人々とは交流がありませんでした。士・農・工の身分制度があった時代の一般社会に属さない人々とされており、えたと呼ばれていました。
そんな家庭に生まれたのが瀬川丑松という主人公です。丑松は父から生い立ちと未分を隠して生きるように堅く言われ、それを貫いていました。その後師範学校を出て小学校教員になり蓮華寺へ下宿をしました。
そんな時自分がえたであることを公言している解放運動家、猪師氏蓮太郎の本に影響を受け彼を敬愛し、文通もするようになりました。丑松は蓮太郎になら素性を言ってもよいと考えるようになりました。
そんな折、偶然自分の生徒の省吾が貧乏であると知ります。省吾は蓮華寺に奉公している志保の弟で、元同僚の息子でもありました。元同僚は皆より早く辞めさせられており困窮していました。丑松は志保も気にするようになりました。
そんな折、丑松は父の訃報を知らされます。帰省途中、蓮太郎が席近くに座っていました。そのような場でも蓮太郎に丑松は気持ちが揺れ動いて自分の出自を明かせませんでした。そうこうしているうちに蓮太郎は非業の死を遂げてしまいます。
やがて丑松の周りに丑松がえた出身であるという噂が流れ始めます。丑松は今まで自分が苦しかったのは出自を隠して生きてきたからだと悟ります。そして学校をやめる覚悟で生徒に自分の出自を明かしました。
生徒は丑松を引き留めようとします丑松の考えは変わりませんでした。新天地で苦しくない生き方をしたかったのです。
知人からの誘いもありアメリカテキサスで事業を始めることを夢見て、東京へと旅立っていったのです。蓮華寺の奉公人、志保も丑松の仕事が安定したら結婚して呼び寄せるようになっていました。
島崎藤村「破戒」のあらすじ②
「破戒」は、明治時代の作家・島崎藤村の長編小説です。被差別部落出身の主人公の人生を書いた社会的な作品として知られています。
この小説の主人公は瀬川丑松といいます。丑松は被差別部落の出身です。しかし幼いころに父親と移住したことで、周囲には出身地を知られずに、平和な生活を送っていました。
師範学校を卒業し教師として働いています。丑松は彼の父の教えに従い、自分の出生を隠して生きていました。
丑松の考えが変わったのは、猪子蓮太郎という作家の本の影響です。猪子蓮太郎は丑松と同じく被差別部落の出身ですが、丑松と違いその事実を隠していません。自分の人生を述べた本で、被差別部落出身者の扱いが不当であると訴えています。
丑松は、自分の素性を明かして堂々と生きたいと思うようになります。
しかし、今まで目にしてきた被差別部落出身者の扱いを思い出し、誰にも伝えることができません。自分の出身を明かしたい気持ちと隠したい気持ちの間で丑松は悩みます。猪子蓮太郎本人にさえ、告白することができませんでした。
一方で、丑松が勤務している学校の校長は、丑松の出身を疑い始めています。父親の死や猪子蓮太郎の死を経て、丑松はとうとう自分の出身を明かしました。担任する学級の生徒の前で謝罪をするように告白して、丑松は学校を去りました。
その後、猪子蓮太郎の知り合いの紹介で、丑松がアメリカに向かうところで物語は終わります。
破戒の全文は書籍で読めます。島崎藤村の世界観を存分に感じられるので、ぜひ読んでみてください。
author:執筆者:高橋渉
島崎藤村「破戒」の感想文・口コミ
【感想・評判調査概要】
調査対象:本書を読んだ人
調査手法:インターネット回答
50代女性
古い時代に生まれた生き物をとさつするといった職業に対する汚らわしいと考える人々による差別が根強く残っていることを知り、人の考えを変えることの難しさを改めて思い知らされました。同じ人間なのにえたというだけで差別を受け、身分を明かせないという苦しさを抱えて生きていかなければならない人がいることに理不尽さを感じました。えたゆえの差別を法律で取り締まるだけでなく、人間一人一人が勉強し考えて言動するスキルを身につけるべきだとも思いました。差別について社会啓発をして幼い頃から教育していくことも人々の考え方を変え、差別撤廃に繋がる一つの方法だと思いました。
20代女性
主人公が、被差別部落の出身であることを明かしたい思いと、知られることが怖くて隠したい思いの両方を持っているところが印象的でした。隠していれば今まで通りの安定した生活が送れるのに、堂々と生きたいという気持ちがあるからこそ悩んだり苦しんだりするのだと思います。また、主人公が自分の出身を生徒の前で伝える場面では、懺悔するような態度になります。それが、今までの経験や周りからの扱いによって卑屈な態度・性格にならざるを得なかったようで悲しいと感じました。
「破戒」のテーマ・主題は差別問題
「破戒」は部落差別の問題を取り扱った小説です。部落出身者たちがどのように差別されてきたかが描写されています。また、堂々と生きることができず、自分の素性を隠して生きるしかない人間の苦しみや悩みが大きなテーマです。
古くから根強くある社会的地位に対する差別は、いくら法律で差別撤廃が叫ばれたとしても、ちょっとやそっとではなくならないのことが作品から読み取れます。
同じ人間なのに、社会的身分が低いだけで就職や結婚に関して差別が生じ、身分を隠して生きなければならない人もいます。また、理由なき差別の陰で泣いている人が大勢いることを、理解する必要があると伝えています。
「 破戒」結末の考察
丑松は自分が素性を隠して生きてきたゆえに苦しんでいたことに気づきます。そして丑松がえた出身であることを自分の生徒たちに真実を話します。
真実を話した上で認めてくれた友人や生徒がいて、希望が感じられる部分がありますが、丑松は人間の差別心は根強い物なので差別がなくなることはないと考えました。
そして今の生活を続けるのは気持ちのうえでもしんどいので、気分も新たに新天地で生きていこうと知り合いからの誘いであったアメリカテキサスで事業を始めることを夢見て東京へと旅立ったのです。
結局、被差別部落出身者だと知られるとそのままの生活ができないという点は、現実の差別の厳しさを表しています。
島崎藤村「破戒」の名言
島崎藤村「破戒」の名言を紹介します。
- 「偏見とは恐ろしいものだ。素性がバレたとたんに皆の態度が豹変し私を軽蔑の目で見はじめた」
- 「なぜ僕は自分が人間であることに気づいてしまったのだろう…なぜ僕は人間なんかに生まれてしまったのだろう」
- 「社会とは酷いものだ。身分制度が無くなっても、人間の差別心というものはなくならない」
- 「隠せ」どんな時でも出身を隠して生きろという丑松の父親の教えです
- 「我は穢多なり」被差別部落出身であることを堂々と述べる猪子蓮太郎の本の冒頭の文です
- 「どうしても言はないのは虚偽だ」丑松が、猪子蓮太郎の自分のことを伝えるか悩んでいるときの言葉です。
島崎藤村「破戒」の基本情報
作品の詳細 | 内容 |
---|---|
作品名 | 島崎藤村 破戒 |
カテゴリー | フィクション |
著者 | 島崎藤村 |
発売日 | 1906年 |
ページ数 | 512 |
言語 | 日本語 |
ISBN-10 | 4101055076 |
ISBN-13 | 978-4101055077 |
「破戒」の英語版書籍
島崎藤村の「破戒」は英語版の書籍もあります。
島崎藤村「破戒」のあらすじ、ネタバレのよくある質問
破戒のよくある質問に回答します。
「島崎藤村 破戒」の映画・関連動画
「島崎藤村 破戒」の映画・関連動画をご紹介します。
島崎藤村の「破戒」は2022年に映画化されています。また、2023年2月8日にブルーレイ&DVDが発売されました。
- 間宮祥太朗(主人公:瀬川丑松)
- 石井杏奈(志保)
- 矢本悠馬(土屋銀之助)
- 眞島秀和(猪子蓮太郎)
- 田中要次(丑松の父)
- 高橋和也(風間敬之進)など
現在の劇場情報は公式サイトでご確認ください。
また、破戒の朗読や解説動画などがYouTubeにあります。気になる方はぜひチェックしてくださいね。
コメント